自治体DXとは?手順と事例から学ぶ「失敗しない」行政デジタル化の進め方

自治体DXは、単なる紙の電子化にとどまらず、住民サービスと庁内業務の仕組みそのものを見直し、デジタルを前提に再設計する取り組みです。人口減少・職員不足が進むなかでも行政サービスを持続可能にするうえで、避けて通れないテーマになっています。

一方で、予算・人材・既存システム・庁内文化などの理由から「やりたいが進まない」自治体も少なくありません。

本記事では、総務省の手順書で示される考え方を踏まえつつ、住民満足度に直結しやすい打ち手、スモールスタートの方法、ツール活用事例までを一気通貫で整理します。

最後に、明日から着手できるチェックリストと次の一手も提示します。失敗しないための優先順位と進め方を、具体的に掴んでいきましょう。

📍自治体DX(行政DX)とは何か?目的と全体像

まずは「自治体DXとは何か」を定義し、デジタル化との違い、求められる背景、目指す姿(全体像)を押さえることで、以降の施策選定と優先順位づけがブレなくなります。

自治体DXの目的は、デジタル技術の導入そのものではなく、住民の利便性を上げながら、限られた人員と財源でも行政サービスを維持・向上できる状態をつくることです。現場に負担を押し付ける「省力化」ではなく、手続きの分かりにくさや待ち時間、二重入力など、住民と職員のムダを同時に減らすことが本質です。

全体像としては、住民接点(窓口・申請・問い合わせ)の改革、庁内業務(審査・決裁・文書管理など)の改革、そしてデータ・システム基盤(標準化・共通化、セキュリティ、データ利活用)を整える流れで考えると整理しやすくなります。どこか1つだけを変えても効果が伸びにくいため、優先順位を付けながら段階的に連動させることが重要です。

また、DXは「一度作って終わり」ではなく、運用しながら改善していく活動です。KPI(中間指標)を置き、現場の声とデータを使って継続的に手直しできる体制まで含めて初めて、自治体DXは成果として定着します。

言葉の定義:単なる「デジタル化」と「DX」の違い

デジタル化は、いまある業務を大きく変えずに、紙を電子に置き換えたり、対面をオンラインに置き換えたりする取り組みです。たとえば申請書をPDFにする、メールで提出できるようにする、といった改善は分かりやすい一方、業務の流れ自体が複雑なままだと、職員側の手間はあまり減りません。

DXは、業務・組織・制度・データの使い方まで含めて見直し、最初からデジタルで回る形に作り替えることです。申請から審査、決裁、通知までを一つの流れとして再設計し、入力を一回にする、添付書類を減らす、審査基準を明確にするなど、仕組みそのものを変えます。

自治体で起きがちな落とし穴は、ツール導入が目的化することです。「導入したが使われない」「結局紙と二重運用」「問い合わせが増えた」といった失敗は、目的(住民価値と持続可能性)より手段(IT導入)が前に出たときに起きやすくなります。最初に、何を減らし、何を早くし、何を正確にするのかを言語化してから、手段を選ぶのが基本です。

自治体DXが求められる背景と社会的意義

背景にあるのは、人口減少と高齢化により行政需要が変化・増大する一方で、職員数や財政には制約が強まるという構造です。2040年に向けて現役世代が減るほど、従来と同じ運用を続けるだけで「回らない業務」が増え、サービス品質の低下や現場の疲弊につながります。

自治体DXは、住民利便性の向上と業務効率化を同時に実現するための手段です。住民は来庁回数や待ち時間が減り、職員は定型作業を減らして、相談支援や複雑な案件など人が担うべき業務に、時間を使えるようになります。

さらに、データを価値創造の源泉として捉え直すことにも意義があります。様式の統一やデータ連携が進むと、EBPM(客観データに基づく政策立案)がやりやすくなり、限られた予算をより効果が高い施策へ振り向けやすくなります。加えて、官民連携が進めば、地域課題の解決や民間の新サービス創出にも波及し、地域全体の持続可能性を押し上げます。

このとき重要なのが「誰一人取り残さない」視点です。オンラインを基本にしつつ、窓口支援や代理申請支援、分かりやすい導線設計をセットにすることで、デジタル化が新たな不平等を生まないように設計できます。

📍なぜ進まない?現場が抱える「行政DXの課題」と阻害要因

自治体DXが停滞する原因は、技術そのものよりも体制・文化・調達や既存システムにあることが多いです。典型的な阻害要因を分解し、対策の当てどころを明確にします。

自治体DXが進まない状況は「現場が非協力的だから」ではなく、進みにくい構造がある場合がほとんどです。忙しい現場ほど改善活動に時間を割けず、結果として改善が進まず、さらに忙しくなるという悪循環に陥りがちです。

また、行政は説明責任や公平性が求められるため、変えるほどリスクが増えると感じやすい領域です。だからこそ、技術選定より先に、合意形成の筋道、移行時の安全策、運用ルールを用意し、現場が安心して前に進める設計が必要になります。

課題を正しく分解できると、打ち手も明確になります。すべてを一気に変えるのではなく、優先領域から小さく成功させ、体制と基盤を徐々に強くしていくことが現実的です。

DX推進を阻む「3つの壁」

自治体DXの阻害要因は、大きく「予算・人材」「アナログ文化」「標準化遅れ(ベンダーロックイン)」の3つに整理できます。これらは別々の問題のようで、実際には強く結びついています。

たとえば人材不足のまま複雑な既存システムを抱えると、要件整理やベンダー調整が進まず、結果として改修コストが高止まりします。高コストが続くと予算確保が難しくなり、小さな改善すら着手できず、紙運用が温存されます。

この連鎖を断ち切るには、全庁で共通の物差し(優先順位とKPI)を持ち、段階的に「やめる業務」を決めることが重要です。DXは追加業務ではなく、業務の入れ替えであるという前提を明確にします。

1. 予算と人材の不足: 専門知識を持つCIO(最高情報責任者) / CDO(最高デジタル責任者)の不在

専任のCIO / CDOや推進人材が不在で兼務が多いと、企画・調達・運用の知見が分断され、意思決定も遅くなります。特に、要件定義と調達の段階で筋が悪いと、導入後に「想定外の追加費用」や「改善できない運用」が固定化しやすくなります。

現実的な対策は、すべてを内製で抱え込まないことです。外部人材の活用(アドバイザー、PMO、伴走支援)で不足部分を補いつつ、庁内では業務を知る職員を中核に据えて、判断できる状態を作ります。丸投げではなく、意思決定に必要な論点(目的、KPI、リスク、運用負担、費用)を庁内が握るのがポイントです。

体制づくりでは、情報部門だけに背負わせない設計が欠かせません。情報部門は基盤やセキュリティ、調達管理を主導し、各課は業務要件と運用を責任持って設計する役割分担にすると、実装後に「使われない」を減らせます。あわせて、共通研修やOJTで最低限のリテラシーを揃えると、合意形成が早くなります。

2. アナログ文化の定着: 紙・ハンコ・対面主義からの脱却の難しさ

抵抗の正体は、単なる気分ではなく不安です。前例踏襲の文化、監査や責任回避の心理、住民対応が悪化するのではという懸念が重なり、紙と対面が安全策として残りやすくなります。

対策は「デジタルに置き換える」ではなく「安心して移行できる設計」を用意することです。たとえば併用期間を設けて移行リスクを下げる、例外処理のルールを決めて現場が判断に迷わないようにする、監査に耐えるログや手順を整備する、といった具体策が効きます。

また、説明責任はデジタルの敵ではありません。むしろ、決裁履歴や処理状況が可視化されると、属人的な運用が減り、住民への説明も一貫します。現場には「便利になる」より先に「困らない」を提示すると、合意形成が進みやすくなります。

3. システムの標準化・共通化の遅れ: ベンダーロックインと改修コスト

個別最適で作られた既存システムは、改修のたびに高コスト・長納期になりやすく、データ連携も難しくなります。仕様がブラックボックス化していると、現場は要件を出しにくく、ベンダー側も変更影響が読めず、結果として「安全側に高い見積もり」になりがちです。

正攻法は、標準準拠や共通化に合わせて、業務側も標準化していくことです。必要以上のカスタマイズをやめ、SaaSやクラウドも選択肢に入れると、更新で継続改善しやすくなります。ただし、クラウドなら何でもよいのではなく、データ所在、権限管理、監査ログ、契約での責任分界を明確にすることが必須です。

調達面では、要件を機能の羅列で書くよりも、達成したい成果(処理時間、二重入力削減、問い合わせ削減など)と運用要件(誰がどう使い、例外をどう扱うか)を具体化すると、後から揉めにくくなります。成果物の管理(設計書、テスト、運用手順、引継ぎ資料)まで含めて契約に落とすことで、特定ベンダー依存を弱められます。

総務省「自治体DX推進手順書」から読み解く優先順位

手順書の考え方を活かすコツは、網羅的に全部やろうとしないことです。重点領域として、フロントヤード改革(住民接点)、行政手続のオンライン化、情報システムの標準化・共通化などが示されており、まずは住民への効果が見えやすい領域から着手すると推進力が出ます。

多くの自治体で取り組みやすい順番は、住民接点の改善で成果を出す、次に内部事務の効率化で現場の余力を作る、最後に基盤(標準化・データ連携)を強化して全体最適へ広げる、という流れです。基盤整備は重要ですが、成果が見えにくいと理解が得られにくいため、フロントの成功とセットで説明できる形にすると通りやすくなります。

手順書は、読み物ではなくチェックリストとして使うと実務に効きます。自庁の現状を「できている / できていない」で棚卸しし、次の3か月で着手できる項目に落とすことで、計画倒れを防げます。

📍住民満足度を即座に上げる!「行政手続きのオンライン化」と「窓口DX」

効果が見えやすく、住民満足度にも直結しやすいのがフロントヤード(住民接点)の改革です。オンライン化と窓口DXを業務改革(BPR)とセットで進める要点を解説します。

住民が不満を感じやすいのは、手続きの分かりにくさ、来庁負担、待ち時間、そして何度も同じことを書かされる体験です。フロントヤード改革は、ここを直接改善できるため、DXの価値が伝わりやすく、庁内の機運づくりにもなります。

ただし、オンライン申請だけを増やしても、内部が紙決裁や手作業のままだと処理が詰まり、住民側の期待値だけが上がってクレームが増えることがあります。住民体験と内部処理を一つの流れとして捉え、ボトルネックをつぶすことが重要です。

窓口DXは、窓口をなくすことではありません。オンラインが苦手な住民にとって、窓口は重要なセーフティーネットです。だからこそ、窓口での支援を含めて、住民が選べる導線を設計するのが現実的な解です。

マイナンバーカード活用と公的個人認証の普及

オンライン化で必ず論点になるのが、本人確認と申請の真正性です。マイナンバーカードと公的個人認証(電子署名)を活用すると、誰が申請したか、申請内容が改ざんされていないかを担保しやすくなり、オンライン申請の信頼性を上げられます。

対象手続、利用頻度が高いもの、添付書類が多く窓口負担が大きいもの、問い合わせが多いものから選ぶと効果が出やすくなります。いきなり難易度が高い手続きに挑むより、成功率の高い手続きで運用の型を作るのが近道です。

同時に、周知と支援が不可欠です。手続きページの案内を分かりやすくする、窓口での入力支援や相談会を設ける、家族の支援を受けられない人への手当てを用意するなど、デジタルデバイド対策を最初から設計に組み込みます。

最も効果を実感しやすい「フロントヤード(住民接点)」の改革

フロントヤード改革は、予約・受付・案内・申請・決済・問い合わせまでを一連の住民体験として設計することが出発点です。個別にツールを入れるより、住民が迷うポイントと滞留ポイントを可視化し、導線を短くするほうが成果が出やすくなります。

見える効果が出やすい施策例としては、窓口予約制、事前入力(来庁前に入力して当日は本人確認だけ)、呼び出しの可視化、キャッシュレス決済、FAQ整備やチャット導入による問い合わせ削減などがあります。特に問い合わせは、窓口混雑や電話待ちの原因になりやすく、改善すると職員側の体感効果も大きくなります。

ポイントは、住民の不安を減らすことです。必要書類の案内を具体化し、手続きの進捗が分かるようにし、問い合わせ先を一本化するだけでも満足度は上がります。DXは高度な技術よりも、分かりやすさと迷わせない設計が効きます。

BPR(業務改革)の視点:業務フローを標準化してツールに合わせる

現行業務をそのままシステム化すると、非効率が温存されます。申請、審査、決裁、通知の流れを棚卸しし、標準化したうえでツールを充てるのが基本です。特に「例外処理」のルールが曖昧だと、結局人手での調整が残り、オンライン化の効果が出ません。

具体的には、添付書類を本当に必要なものに絞る、審査基準を明文化して判断ブレを減らす、二重入力をなくすために入力元を一本化する、といった改善が効きます。ここで重要なのは、現場の暗黙知を引き出して、誰がやっても同じ品質で回る形にすることです。

KPIは、来庁率、処理時間、差戻し率、電話件数、ピーク時待ち時間など、住民と職員の両方に効く指標を選びます。KPIがあると、改善が感想ではなく事実で語れるようになり、庁内の納得感が積み上がります。

📍「スモールスタート」が成功の鍵!コストを抑えてDXを実現する方法

大規模更改から始めると合意形成もコストも膨らみがちです。小さく始めて効果検証し、横展開していくスモールスタートの設計が失敗を減らします。

スモールスタートの狙いは、安く始めることだけではありません。短期間で成果を出し、運用の型と合意形成の型を作ることです。型ができると、次の施策の計画・調達・現場展開が速くなり、DXが単発で終わらず連続します。

進め方は、対象業務を限定し、KPIを決め、試行期間を設けて効果検証し、改善してから横展開するのが基本です。ここでの失敗は許容しやすい範囲に抑え、学びを次に活かせる形にすると、組織としての成功確率が上がります。

また、スモールスタートはベンダーロックイン回避にも効きます。最初から大規模な一括導入をすると後戻りが難しくなりますが、小さく始めれば、要件と運用の勘所が掴めてから適切な選定や標準化に進めます。

巨額予算は不要?SaaS(クラウドツール)活用のメリット

SaaSは、初期費用を抑えやすく短期間で導入でき、運用保守の負担も軽くしやすいのが強みです。アップデートで機能改善が継続されるため、導入後も改善しながら使い続けやすく、スモールスタートと相性が良い選択肢です。

一方で、自治体利用では確認すべき点が明確にあります。契約条件(障害時対応、SLA、データ返却・削除、下請管理)、データの所在と取扱い、権限管理、監査ログ、バックアップ、個人情報の取扱いなどは、導入前にチェックしておくべき必須項目です。

セキュリティは「強い設定がある」だけでは不十分で、運用できるかが重要です。パスワード運用や権限付与・棚卸し、退職・異動時のアカウント管理など、庁内側の運用ルールまでセットで設計しないと、便利さがリスクに変わります。

行政の様々な業務を効率化!汎用ツールとしてのイベント管理システム活用

自治体の業務を見渡すと、「日時を決めて住民を集める」「事前に申し込みを受け付ける」「当日の出欠を確認する」というフローが含まれる業務が、実は非常に多いことに気づきます。

  • 住民向け講座・セミナー・ワークショップ

  • 各種相談会・健康診断・親子教室の予約

  • 避難訓練や防災イベントの参加登録

  • 施設見学会や公聴会の受付

  • 職員研修や庁内勉強会の出欠管理

これらは担当課が違っても、「電話や紙で受け付け、Excelで名簿を作り、当日は紙の名簿で消し込みを行う」というアナログな運用が共通しており、職員の負担とミスの温床になっています。

こうした業務を一元的にデジタル化する解決策として、イベント管理システムの活用が注目されています。「イベント」という名前ですが、実態は「汎用的な受付・参加者管理システム」であり、上記のようなあらゆる「人が集まる業務」に転用可能です。

イベント管理システム「イーベ!」の活用メリット

数あるシステムの中でも、イーベ! は、その汎用性とセキュリティの高さから行政DXの有力な選択肢となります。単なるフォーム作成ツールとは異なり、受付後の「管理・運営」までを自動化できるのが特徴です。

  • 申込受付・抽選・キャンセル待ちの自動化: 電話対応や手動での調整作業を大幅に削減します。

  • メール・SMSの一斉配信: リマインドメールを自動送信し、当日の無断キャンセル(No Show)を抑制します。

  • QRコードによる非接触受付: スマホをかざすだけで受付が完了し、窓口の混雑と「密」を解消します。

  • データに基づく改善(EBPM): 参加者の属性やアンケート結果がデータとして残るため、次回の企画改善や政策立案に活かせます。

特定のイベントだけでなく、全庁的な「受付業務の共通プラットフォーム」として導入することで、様々な課の業務効率化を一度に推進できる点が、自治体DXにおける大きな強みです。

> イベント管理システム「イーベ!」について詳しく見る

📍【自治体DX事例】宇都宮市も導入!イベント管理システム活用ケース

具体事例は、導入イメージ・庁内説明・稟議の材料になります。ここではイベント管理システム活用を中心に、導入の流れと得られた効果を整理します。

事例の価値は、成功談そのものよりも、どんな課題から始まり、どう試行し、どんな運用設計で定着させたかにあります。特に自治体では、担当課が変わっても回る仕組みになっているかが、継続利用の分かれ目です。

イベント業務は住民接点が明確で、効果も「電話が減った」「受付が楽になった」など体感として伝わりやすい領域です。だからこそ、フロントヤード改革の入口として採用されやすく、次の施策への庁内理解を得る足がかりにもなります。

以下では、宇都宮市の導入を例に、時系列での進め方と、横展開のヒントを整理します。

〈事例紹介〉栃木県宇都宮市での導入実績

宇都宮市では、講座や説明会、各種相談会など、申し込みが発生する住民向けイベントで、電話や窓口対応の負担が積み上がりやすい状況がありました。担当者の繁忙期には受付や名簿作成に時間が取られ、本来の企画や当日運営に集中しづらいことが課題になりやすい領域です。

導入の進め方としては、まず対象イベントを限定して試行し、運用上の論点(申込フォーム項目、抽選要否、キャンセル待ち、通知文面、個人情報の扱い)を整理します。そのうえで、効果測定の指標を置き、一定期間の実績をもとに庁内説明を行い、対象イベントや利用課を拡大していく流れが現実的です。

運用設計では、担当課の役割と権限を明確にし、住民への告知導線も整備します。たとえば、市HPや広報紙での案内文をテンプレート化し、申込締切、抽選結果通知日、当日受付方法を明確にすると、問い合わせが減り、現場が回りやすくなります。

成果指標の例としては、電話件数の減少、受付・名簿作成の工数削減、リマインドによる参加率の改善、当日受付の待ち時間短縮、アンケート回収率の向上などが挙げられます。数字で示せると、次の予算化や横展開の説得力が大きく上がります。

> 宇都宮市におけるイベント管理システムの活用事例について詳しく見る

その他、行政DXにおけるツール活用事例

イベント以外でも、住民接点で効果が出やすいツールは多くあります。たとえば、窓口予約・順番待ち管理、電子申請、オンライン決済、FAQやチャットボット、オンライン相談などは、待ち時間と問い合わせを減らしやすい代表例です。

庁内向けでは、電子決裁、文書管理、RPAによる定型入力の自動化、生成AIを含む検索・下書き支援などが候補になります。ただし、庁内ツールは効果が住民に見えにくいため、フロントで成果を出してから導入すると理解が得られやすくなります。

よくある成功パターンは、住民接点で分かりやすい成果を作る、現場の余力を作る、次に内部事務を改善してさらに余力を増やす、最後に基盤整備へ投資して全体最適に進む、という順番です。ツールは目的ではなく、展開シナリオの中で適材適所に置くのがポイントです。

📍自治体DXを進めるためのチェックリストと今後のステップ

最後に、失敗しないための最小チェックリストを提示し、次に何をすべきかを具体化します。小さな成功体験を積み上げ、財源も活用しながら継続的に改善していきましょう。

自治体DXは、理想論や大規模構想だけでは進みません。担当課が「これなら回る」と思える範囲に落とし込み、成果を出し、次の投資につなげることが実務の核心です。

ここでは、明日から使える形として、対象業務の選び方、KPI設計、体制、財源、横展開の観点で最小チェックポイントを整理します。全庁一斉ではなく、成果が出やすい領域から順に進めることが、結果的に最短ルートになります。

チェックの結果、足りない要素が見つかったとしても問題ではありません。弱点が見えた時点で、外部支援の活用や共同調達、広域連携など選択肢を取れるようになるからです。

失敗しないための最小チェックリスト


対象業務の選定基準(成果が出やすい条件を満たしているか)

□ 頻度が高いか
□ 問い合わせが多いか
□ 属人化が強いか
□ 短期間で成果が見える
□ 失敗しても影響が限定的

KPI設計・効果測定(導入前後で比較できるように、以下の例を置いているか)

□ 電話件数、来庁率、処理時間、差戻し率、待ち時間、残業時間などを置いているか

合意形成のコツ(現場の負担軽減として、以下を具体的に提示できているか)

□ 入力が減るか
□ 問い合わせが減るか
□ ミスが減るか

財源申請で求められがちな要素(これらを整理して示せているか)

□ 目的の明確さ、KPI、体制、スケジュール、効果見込み、持続性が示せているか

横展開で残すテンプレート(担当者が変わっても再現できるように用意しているか)

□ 業務フロー、告知文、権限設計、問い合わせ対応、マニュアルを残しているか


まずは「小さな成功体験」を作ろう

小さな成功体験を作るには、対象業務の選定が9割です。選定基準は、頻度が高い、問い合わせが多い、属人化が強い、短期間で成果が見える、失敗しても影響が限定的、のように「成果が出やすい条件」を満たすことです。

次に、KPIを決めてから着手します。例として、電話件数、来庁率、処理時間、差戻し率、待ち時間、残業時間などを置き、導入前後で比較できるようにします。数字が出ると、現場の納得感が増え、庁内説明や次年度予算の材料になります。

回し方は、KPI設定、試行、検証、改善、横展開の順です。横展開では、テンプレート(業務フロー、告知文、権限設計、問い合わせ対応、マニュアル)を残すと、担当者が変わっても再現できます。

合意形成のコツは、理念よりも現場の負担軽減を先に示すことです。現場に「入力が減る」「問い合わせが減る」「ミスが減る」を具体的に提示できると、協力者が増え、改善が回り始めます。

実務における具体的な回し方は、以下のステップです。

  • ステップ1:KPI設定
    (次に、KPIを決めてから着手し、導入前後で比較できるようにします。)

  • ステップ2:試行
    (現場に「入力が減る」「問い合わせが減る」「ミスが減る」を具体的に提示し、協力者を増やして試行します。)

  • ステップ3:検証
    (数字を出し、現場の納得感を増やして検証します。)

  • ステップ4:改善
    (成果を出し、次の投資につなげるために改善を行います。)

  • ステップ5:横展開
    横展開では、テンプレート(業務フロー、告知文、権限設計、問い合わせ対応、マニュアル)を残すと、担当者が変わっても再現できます。

財源確保(デジタル田園都市国家構想交付金など)の活用

財源は、制度名を覚えることよりも、要件に合わせて探すことが重要です。国の交付金や関連事業、都道府県の補助、広域連携の枠組みなどを情報収集し、自庁の課題と施策をひも付けて整理します。

申請で求められがちな要素は、目的の明確さ、KPI、体制、スケジュール、効果見込み、持続性です。特に持続性は重要で、単年度で導入して終わりではなく、運用費をどう見立て、どの部署が運用責任を持つかまで示せると採択後もブレにくくなります。

また、共同調達や広域連携は、コストだけでなく人材面でも効きます。仕様の共通化が進むと、ベンダー比較がしやすくなり、特定ベンダー依存を弱められます。小さく成功させた施策ほど、他自治体と共有しやすい資産になります。

📍まとめ:ツールを賢く選定し、住民も職員も楽になるDXを

自治体DXは、住民価値の向上と行政サービスの持続可能性を両立させるための取り組みです。ツール導入が目的にならないよう、目的、KPI、運用までをセットで設計することが失敗を避ける第一歩です。

進め方としては、住民接点のフロントヤードから小さく始め、BPRとセットで効果を出し、成功体験を横展開していくのが現実的です。見える成果が積み上がるほど、庁内の合意形成と予算確保が進み、基盤整備や標準化にも踏み込みやすくなります。

ツール選定では、標準化に寄せられるか、運用負担が増えないか、拡張性があるか、セキュリティと監査に耐えるかを確認しましょう。まずは成果が出やすい業務を一つ選び、3か月で効果検証するところから始めることが、DX推進の第一歩になります。


記事を書いた人

https://x.com/fukuoka_yocco

坂田洋子 | 編集・クリエイティブディレクター。イーべ!広報・マーケティング担当。CI、企業広告、食品・化粧品広告制作に携わる経験から、セミナー・イベント開催における集客、「人を動かす」仕組みなどをご提案しています。サメが好きです。X(Twitter)

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